ひとくくりにペットといっても、ワンちゃんと猫ちゃんでは、対応が共通しているものと異なるものがあります。肛門腺絞りはワンちゃんでは一般的ですが、猫ちゃんはどうなんだろう?やった方がいいのか、やらない方がいいのか?わかりませんね。今回は、猫ちゃんにとって肛門腺絞りは必要かどうかについて、獣医学的観点からお話しします。
肛門腺とは、肛門の左右にある分泌腺で、強いにおいのある分泌物をためています。猫ちゃんにも肛門の左右に存在し、肛門嚢とも呼ばれ、マーキングやコミュニケーションに使われます。我が家の3匹猫ちゃんも、お互いの肛門付近の匂いを嗅ぐ事でコミュニケーションを取り合っています。通常は排便と同時に少量ずつ分泌されるため、健康な猫ちゃんでは無理に肛門腺を絞る必要はありません。一方、運動量が少ない猫ちゃん、肥満気味の猫ちゃん、便が柔らかい猫ちゃん、高齢猫ちゃんなどでは、分泌物がうまく出ずに肛門腺内にたまりやすくなります。古い分泌物が溜まってしまうと、違和感を生じ、肛門腺が腫れたり、強いかゆみや痛みが生じたりすることがあります。猫ちゃんが肛門腺付近をいじったり掻いたりすることでさらに炎症が悪化する可能性もあります。
ワンちゃんでこの状態になるとよくお尻を床にこすりつけるお尻歩きをする子が多くなります。猫ちゃんにもこの行動は見られ、危険信号です。肛門腺に細菌が溜まって炎症がさらに悪化すると、肛門腺炎になり、皮膚が敗れると破裂して膿が出ることもあります。ここまで進行すると、治療には投薬や洗浄が必要となり、猫ちゃんへの負担も大きくので、予防のために必要な猫ちゃんには肛門絞りが有効な対策になります。
とは言え、肛門絞りが必要かどうかを判断するのは個人ではかなり難しく、問題のない猫ちゃんに対して過剰に肛門腺絞りを行うと、かえって刺激となり炎症を起こす可能性があります。また、猫の肛門腺は犬よりも小さく、無理な圧迫は痛みやケガの原因になります。普段からお尻の様子や行動をよく観察し、異変があれば早めに動物病院に相談することが、猫ちゃんの快適な生活を守るうえで最も大切だと言えるでしょう。

コラムの執筆者
所属研究室:麻布大学 獣医学部 獣医学科 薬理学研究室
福山 朋季先生
東京農工大学農学部獣医学科を2004年に卒業後,一般企業および米国獣医系大学(ノースカロラ イナ州立大学)で医薬品,化粧品,農薬,一般化学物質および動物用医薬品の安全性や薬効確認の 研究に従事し,2018年10月に麻布大学に赴任させていただきました。
現職では,①環境中物質が免疫機能に及ぼす影響評価,②ヒトや伴侶動物(ワンちゃんやネコちゃん )のアレルギー病態解明および対策商品の開発,③ワンちゃんやネコちゃんの歯周病機序解明および 新しいケア商品の開発,を関連する企業様と協力して実施させていただいております。






