人間でも旅行中に便秘になる、食欲がなくなる、寝られなくなる等、環境が変わることで普段のルーチンができなくなるという事があると思います。もちろんその人の性質にも依存し、環境の変化に全く無頓着という方もいらっしゃるでしょう。猫ちゃんは、種として環境等の変化にとても敏感で、ちょっとしたことでも行動や体調に反映される動物だと言われます。こうしたルーチンワークの中でも、食事と排泄は、猫ちゃんの健康維持に直接的にかかわる重要な生理行動です。「掃除や在庫の都合で猫砂を変えたら、猫の行動が変わった、トイレをしなくなった」という経験を皆様もお持ちかもしれません。その原因と対処法はどうしたらよいでしょうか?
それぞれの猫ちゃんについて、どのトイレタリーが好みか、好みじゃないは本人に聞いてみないとわかりません。猫ちゃんは色々な感触に敏感で、古い砂と新しい砂のちょっとした違いも認識している可能性が高いです。もし、新しい猫砂が湿っている、乾燥している、粗い、滑りやすい、または臭いが強いなど、猫ちゃんにとって使いにくいと感じていると、新しいものに慣れるまで時間がかかる場合があります。一方で、猫ちゃんは気まぐれで、トイレ後に砂をかけないこともしばしばあります。新しい砂の刺激がその一因となって、なんとなくやめてしまったという場合もあります。そもそもすべての猫ちゃんが、砂をかけるという行動を必ずしも毎回行うとは限らず、猫によっては、トイレ後にすぐに砂をかけないことがあります。
自分の排泄物の上に猫砂をかけるという行動のみをしなくなったけれど、排泄は問題なくしているという場合、目的は達成しているので、飼い主さんにとって支障がなければ、猫ちゃんの健康上はそれほどおおきな問題ではないかもしれません。一方、排泄そのものに支障が出てしまった場合は早急な改善が必要です。前の砂が現在も入手可能であれば元に戻すのが最も簡単な対応策になります。何かの理由により、元の猫砂が入手不可能な場合は猫ちゃんが気に入るような別の猫砂を探してあげる必要があります。最初のうちはいくつかを別の場所に設置して、どれが好みかを選んでもらうのが近道です。

コラムの執筆者
所属研究室:麻布大学 獣医学部 獣医学科 薬理学研究室
福山 朋季先生
東京農工大学農学部獣医学科を2004年に卒業後,一般企業および米国獣医系大学(ノースカロラ イナ州立大学)で医薬品,化粧品,農薬,一般化学物質および動物用医薬品の安全性や薬効確認の 研究に従事し,2018年10月に麻布大学に赴任させていただきました。
現職では,①環境中物質が免疫機能に及ぼす影響評価,②ヒトや伴侶動物(ワンちゃんやネコちゃん )のアレルギー病態解明および対策商品の開発,③ワンちゃんやネコちゃんの歯周病機序解明および 新しいケア商品の開発,を関連する企業様と協力して実施させていただいております。