親子関係がどこまで続くのか、これは動物種によって異なり、同じ動物種でも生活環境によって大きく異なります。肉食動物は赤ちゃんを大事に長い期間をかけて育てる傾向があり、結果として親子関係が長く続きます。一方、天敵の多い動物は赤ちゃんをできるだけ早く一人前にする事で生存率を上げる一方で、親子の期間が短くなります。猫ちゃんの場合、比較的前者に近くなりますが、「人間」という別の要因が介在する事で自然界とは違った親子関係が存在する可能性もあります。今回は猫ちゃんの親子関係について学んでいきたいと思います。
一般的に猫ちゃんの子育ては、生後約8週間までの授乳期間、生後12週以降の社会化期間に分けられます。生まれてすぐ母猫は、子猫に母乳を与え、世話をします。授乳期間は、母猫と子猫の絆が強く、母猫は非常に保護的です。生後4週間頃からは、母猫が子猫に狩りやトイレの使い方などを教え始めます。お家の中で子育てが行われる場合でも、この期間は大きく変わりがないように思います。特に産後すぐの母猫ちゃんはストレスに敏感です。ご自宅でそのような場面に遭遇した場合も、できるだけそっとしておいてあげましょう。生後8週間ほどで離乳が進み、子猫は固形食を食べるようになります。この時期になると、母猫は少しずつ子猫との距離を取るようになりますが、まだ世話を続けます。
社会化期間には子猫の独立心が強くなり、他の猫や人間との関係を学びます。母猫は子猫に対して少しずつ母性行動を減らし、自立を促します。母猫と子猫が一緒に暮らしている場合でも、子猫が成猫になると、母猫としての行動は次第に薄れていきます。特に生後6か月を過ぎて子猫が性的に成熟すると、母猫は子猫を他の成猫と同様に扱うようになるといわれています。ただし、お互いをよく知っているため、絆が強いことが多いようです。母猫が子猫を攻撃することは少ないですが、逆に完全に母親としての役割を続けるわけでもありません。
つまり、母猫は子育ての期間が過ぎると、母性行動は徐々に減っていきますが、一緒に暮らしていれば、互いを特別な存在として認識することは続きます。人間と比較して親子の年齢差が少ない事から、成猫になった後は兄弟や同居人といった関係性が続くようです。
コラムの執筆者
所属研究室:麻布大学 獣医学部 獣医学科 薬理学研究室
福山 朋季先生
東京農工大学農学部獣医学科を2004年に卒業後,一般企業および米国獣医系大学(ノースカロラ イナ州立大学)で医薬品,化粧品,農薬,一般化学物質および動物用医薬品の安全性や薬効確認の 研究に従事し,2018年10月に麻布大学に赴任させていただきました。
現職では,①環境中物質が免疫機能に及ぼす影響評価,②ヒトや伴侶動物(ワンちゃんやネコちゃん )のアレルギー病態解明および対策商品の開発,③ワンちゃんやネコちゃんの歯周病機序解明および 新しいケア商品の開発,を関連する企業様と協力して実施させていただいております。