皆さん初めまして,麻布大学獣医学部 薬理学研究室の福山と申します。 ワンちゃんや猫ちゃんのお薬,サプリメント,ペットフードを開発して, その安全性と効果を調べています。専門はアレルギーと歯周病ですが,このコラムではワンちゃんや猫ちゃんの「?」に関して幅広く皆さんと勉強していきたいと思います!よろしくお願いいたします。
さて,新型コロナウィルス蔓延による最初の緊急事態宣言から既に1年半,いまだに緊急事態宣言中です(東京都在住)、、、 私も含め,多くの皆様がコロナ前と比べるとご自宅で過ごす時間が増えたのではないでしょうか?一般社団法人ペットフード協会の2020年調査では, 新しく家庭に入ったワンちゃんの数は前年比114%,猫ちゃんでは116%となっており,コロナ禍でワンちゃんや猫ちゃんを新しく迎えられた方も多いようです。
猫派の私も,先住猫の「あずきちゃん(3歳)」に加えて,昨年,「ちまき君(1歳)」を新たな家族として迎えました。このコラムではあずきちゃん,ちまき君の情報も皆様と共有できればと思っております。
今回から数回にわたり「猫とおトイレ(おしっこ)」に関する情報をご紹介していきます。先ほどの2020年調査では,猫ちゃんの平均寿命は15.45歳で人間の年齢に換算すると約80歳, 獣医学やお薬の進歩によって猫ちゃんも長生きできるようになりました。 一方で10歳以上のネコちゃん(人間年齢で約60歳以上)の割合が全体の25%を超えており,ネコちゃんも超高齢化社会に突入しています。
3歳のあずきちゃんも人間年齢では28歳ですから,若いと思いつつもあっという間に中年に突入です。 中~高齢になるにつれ,人間と同様に猫ちゃんも様々な病気になるリスクが高くなります。
猫ちゃんの代表的な病気といえば慢性腎臓病で,高齢猫の死因第一位に挙げられています。慢性腎臓病は,何らかの原因で腎臓に異常が起こる (急性腎障害)事で尿の通り道の細胞が死んでいき,死んだ細胞がゴミとして長年蓄積する事で排水管が詰まるように腎臓が壊れる病気です。
最近の研究では,そのゴミを掃除するスイッチとなるような遺伝子(AIM)が猫ちゃんでは尿中に移動できず,人間や犬と比較して慢性腎臓病の危険性が高い事がわかっています。
実際に猫ちゃんの発症リスクはワンちゃんの約3倍で,5~15歳齢で40%以上,15歳齢以上の80%以上が慢性腎臓病と報告されています。 AIMをターゲットにした猫ちゃんの新しい治療薬が東京大学の研究グループで研究されていますので,ご興味のある方は是非調べてみてください!
とはいえ,腎臓病が悪くなる前に予防してあげられれば,猫ちゃんが苦しむことも,高い医療費を払う必要もありません。
次回は腎臓の働きと腎臓病によってどのような症状が引き起こされるのかをお話ししたいと思います。
コラムの執筆者
所属研究室:麻布大学 獣医学部 獣医学科 薬理学研究室
福山 朋季先生
東京農工大学農学部獣医学科を2004年に卒業後,一般企業および米国獣医系大学(ノースカロラ イナ州立大学)で医薬品,化粧品,農薬,一般化学物質および動物用医薬品の安全性や薬効確認の 研究に従事し,2018年10月に麻布大学に赴任させていただきました。
現職では,①環境中物質が免疫機能に及ぼす影響評価,②ヒトや伴侶動物(ワンちゃんやネコちゃん )のアレルギー病態解明および対策商品の開発,③ワンちゃんやネコちゃんの歯周病機序解明および 新しいケア商品の開発,を関連する企業様と協力して実施させていただいております。