COLUMN
コラム
ペットフードとしてのジビエについてのお話し
2022.01.26
皆様こんにちは,麻布大学獣医学部 薬理学研究室の福山です。今日はいつもと趣向を変えてペットフードのお話です。
皆さんのワンちゃん、ネコちゃんはどんなフードを選択されているでしょうか?
ペットの高齢化に伴い、人間と同様、ワンちゃん、ネコちゃんの生活習慣病リスクが増加しています。
最近では各社さんが様々な種類のフードを開発・販売されていますので、皆さんもどれを選択していいんだろうとお悩みの事と思います。
今日はその中でも「ジビエ」を活用したフードについて、その歴史と特徴についてお話したいと思います。皆さんのペットフード選びの参考にしていただければ嬉しいです!
「ジビエ」は皆さんご存じの通り、天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉でフランス語です。
英語ではゲームまたはクワォリーとも呼ばれ、日本でもイノシシ肉を使った牡丹鍋や鹿肉を使ったジンギスカンが有名ですね。
イノシシやシカが農業や林業に及ぼす被害は年々増加しており、鳥獣被害防止特措法によって捕獲や狩猟が決められた地域で認められています。
近年では、捕獲したイノシシ肉やシカ肉の有効活用法としてジビエを利用したフードや化粧品等が着目されています。ジビエを用いたペットフードにも近年注目が集まっており、麻布大学でも長野県小諸市と提携した鹿肉ペットフードの研究・開発が行われています。
そもそも、イヌ科動物もネコ科動物も自然界においては鹿や猪をはじめとする野生動物を餌としています。人間によって1万年以上前に家畜化された理由も狩猟のパートナーとしてなので、ワンちゃん、ネコちゃんにとって、本来ジビエフードは特別なものではありません。
では、ジビエフードは普通の牛肉や豚肉となにが違うのでしょう?
一番は油の量と質が違うといわれています。食用の牛肉や豚肉には適度な脂が含まれていて、これが美味しいと同時に摂取しすぎると肥満や肝臓への負荷に繋がります。
ジビエは脂肪が少なく、赤肉が多いため、生活習慣病のリスクが少なく、筋肉や臓器を作るのに必要なタンパク質が多く入っています。
また、ドコサヘキサエン酸(DHA)やα・リノレン酸と呼ばれる炎症を抑えるオメガ3脂肪酸は、魚油で多く、牛脂や豚脂では割合が少ないといわれています(魚油配合のペットフードが多いのはそのような理由です)。鹿肉や猪肉は獣肉にも関わらずオメガ3脂肪酸の含有量が比較的多く、炎症性疾患の軽減にも効果があるといわれています。
ジビエ?鹿肉?猪肉?と聞くと、獣臭い、固そうというイメージがあるかもしれませんが、加工技術も進歩していますので、興味のある方は試してみてください。
ただ、ワンちゃん、ネコちゃんのアレルギーや既往疾患によって相性がありますので、かかりつけの獣医さんとも相談してみてくださいね。
コラムの執筆者
所属研究室:麻布大学 獣医学部 獣医学科 薬理学研究室
福山 朋季先生
東京農工大学農学部獣医学科を2004年に卒業後,一般企業および米国獣医系大学(ノースカロラ イナ州立大学)で医薬品,化粧品,農薬,一般化学物質および動物用医薬品の安全性や薬効確認の 研究に従事し,2018年10月に麻布大学に赴任させていただきました。
現職では,①環境中物質が免疫機能に及ぼす影響評価,②ヒトや伴侶動物(ワンちゃんやネコちゃん )のアレルギー病態解明および対策商品の開発,③ワンちゃんやネコちゃんの歯周病機序解明および 新しいケア商品の開発,を関連する企業様と協力して実施させていただいております。